検査入院
その2

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循環器科に検査入院する


整形外科の予約時間は午前11時になっていた。

今日は血液と尿の検査の他にレントゲン写真も撮るので、結構忙しい。
それでも1時間も待てばその日の検査結果が聞けるのだ。

今日は、整形と循環器の二股受診なので、いつもより早い目の8時に家を出た。
最初に整形外科の検査を済ませ、次ぎに循環器科に診察券をだし、まず此処までは予定通り。

時間はたっぷりあるし、11時までに呼ばれたら上出来だな、と、覚悟を決め椅子に深々と腰を掛けた。
間もなく、看護師が近寄ってきて「今日はどうされたのですか?」と訊く。
昨日のいきさつをかいつまんで話すと、すぐに診察室に入るよう呼ばれた。
思いがけなかったが、これが、想定外のことが次々と起こる前触れだったような気がする。

不審げな顔の担当医に、昨日の出来事を詳しく話すと・・・

先生「それは不安定狭心症なので、入院してもらいます」
私 「えっ今すぐにですか?」
先生「このままだと心筋梗塞になりますよ」
私 「え〜っ!」
先生「入院してもらいカテーテル挿入の造影検査をします」

嫌も応もなくというのはこのことで、あっという間に看護師が持ってきた車椅子に乗せられていた。

慌てて、整形外科に予約が入っていると言うと、病室へ往診してもらえばいいと、先生はにべもない。
採血・心電図・超音波・胸部のレントゲン検査等々を済ませ、事の成り行きについていけない不安な顔をして病室に運ばれた。

そこは、ナースステーションに一番近く、看護師の目が届きやすい4人部屋だった。
見回すと重症の人ばかりのようで、重苦しい雰囲気が漂い、賑やかな整形外科の病室とは大違いだ。
それぞれのベッドはカーテンで仕切られていて、会話もなさそう、なんだか嫌な予感がするなぁ・・・

すぐにポータブルトイレがベッド脇にどんと置かれた。
胸には心電図送信機がつけられ、私は常に監視される身となったらしい。

入院準備が何も出来ていない私のパジャマは、レンタルパジャマ。
気がつくとすでにお昼、その食事に使うお箸は、看護師さんがとりあえずと持ってきた割り箸。 こうして2週間の検査入院が慌しく始まった。

昼食の後、子供に入院道具を持ってきてもらおうと、車椅子で公衆電話まで行き、そして部屋へ戻ろうとした時。

突然、車椅子を自分で動かしてはいけませんと、厳しいお叱りの声が後ろからとんできた。
婦長さんらしいその人は、とにかく動いてはいけません、と怖い顔をして言う。
はは〜ん、道理でポータブルトイレがベッド脇にある訳だ。
ここでやっと、自分の置かれている状況が理解できるようになってきた、というか、頭が正常に動き出した。

ようやく落ち着いてくると、同室の人の様子も分かってきた。
隣のベッドの人は、認知症を患っているのに一人暮らしをしているらしい、火の始末とか出来るのだろうか。
家がすぐ其処だからちょっと帰ってくると言っては、看護師さんを困らせている。
もう一人は、はっきりとした意識がなく、おしめ交換や検温の時だけ大きな声をだす。
後の一人は、糖尿病で足が痛いらしく、透析に以外はずっと寝ている、そんな人々だった。
もしかして、私も同室の人と同じ状態なのか?・・・そう思われるだけでも、なんだか悲しいね。

午後遅くになって、病室に来られた先生からカテーテル挿入検査の説明をいろいろと受ける。
検査前日の説明では、最悪の場合の話も聞いたが、ま、成るようにしかならないと、不安感は抱かなかった。
全身麻酔なら気道確保が恐ろしいが、軽い部分麻酔だし、それよりどんな検査なのか興味の方が強い。

こんな私は、不真面目でいけない患者かも・・・

大腿部からカテーテルを挿入し、心臓や脳の血管に狭窄部が見つかれば、ステントを入れて狭窄部を膨らませる。
すると、詰まっていた血の通りがよくなり、心配される心臓や脳の障害が取り除かれるという素晴らしい技術。
そんなテレビの映像を、すごい技だなぁ、近代医学もここまで進歩したかと、感心しながら観た事がある。

それをこれから私がしてもらうのだけど、いや〜ぜんぜん実感が湧かないねぇ。

その3に続く



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